晴耕





      コケノート



                         



  【収録キノコ】(うまいもん順)
  「ヒラタケ12」  「ウスヒラタケ12」  「スギヒラタケ13」
(毒?) 
  「アミタケ」  「エノキタケ」  「ハナビラニカワタケ」  「キクラゲ」 
  「アラゲキクラゲ12」  「ヒメキクラゲ」  「ウラベニホテイシメジ」 
  「コウジタケ」  「チチアワタケ」  「ササクレヒトヨタケ」  「コガネタケ」 
  「マツカサキノコモドキ」  「ムラサキアブラシメジモドキ」  「キチチタケ」 
 
 「チリメンチチタケ」


  【参考資料】(重要)
  間違いやすいきのこの鑑別
   クサウラベニタケ・イッポンシメジ編

    ツキヨタケ編
    ドクササコ編







 




  「忘れた頃に…」 20051226


 このところ北陸は、忘れた頃にやって来た師走のドカ雪で、パニック状態になっている。JRなどの交通機関は運休がめだち、高速道路も新潟方面が不通になった日もあった。少なくとも年内は、こうした状況が続きそうで、久しぶりに本格的な雪国らしい冬となった。

 ところで、今週の更新は、「コケノート」です。
 もうこんなコーナーがあったことすら、みんな忘れているだろう。前回更新したのが去年の12月12日だから、まるまる一年ほったらかしだった。今年の秋、ようやく自由に歩けるようになった息子を連れて、ぜひピクニックに行こうとはりきっていたのに、なぜか週末のたびに天気が悪くなったり、急用ができたりして、ついにどこへも行けなかった。
 それと前回書いたように、あの「スギヒラタケ」が毒キノコ扱いされ、安心して採れるコケのレパートリーが、少なくなったせいもある。ほんとに「スギヒラタケ」は、あちこちに生えていて素人でも誤りなく収穫できる、貴重なコケだったのに、食べられなくなって残念だ。
 しかしこれはご先祖代々食べてきて、なんら問題なかったものだけに、一時の突然変異かどうか、慎重に見きわめたい。猛毒でないから、少々試食してもかまわないだろう、などと言って、来年しっかり食中毒になってたりして…。

 そんな寂しい秋だったが、この大雪前、なんと奥様が朝の散歩帰り、「キクラゲ」を大量に採ってきた。小さめのレジ袋一杯で、これほどの収穫はいつ以来だろうか。「ヒラタケ」もいくらか混じっており、まだまだ採りきれなかったという。腰の重い愚夫でも現場を見ないわけにいかず、デジカメ片手に朝日山の某所へ赴いた。
 とある空き地にケヤキとおぼしき切り株があり、あちこちにわさわさとコケが生えていた。ただしすでに腐っているもの、干からびているものがあり、美味しそうなのは限られていた。それでもレジ袋一杯採って、まだまだ余るくらいだった。帰って獲物をよく観察すると、「キクラゲ」と「アラゲキクラゲ」の2種類があった。

 そうこうするうち楽しい夕食の時間となり、「アラゲキクラゲ」は中華料理の定番「木犀肉」に、「キクラゲ」と「ヒラタケ」はコケ料理の定番中の定番「キノコ汁」となった。新鮮なコケを思いっきり入れた「木犀肉」は、やはり絶品だった。また余った「アラゲキクラゲ」はしっかり乾燥させて、後日の楽しみにとってある。
 しかし、再度収穫に赴こうとした矢先、件の大雪で空き地が埋もれ、次回は来春までのお預けとなったのだった。…(涙)。

【ヒラタケ】


               【アラゲキクラゲ】→




 




  「スギヒラタケの危機」 20041212


 今年は家庭の事情で、ほとんどコケ採りに行っていない。また、台風が来るわ、地震が起きるわ、熊が出没するわで、恐くて山など入れない。それにこの秋は、変に温い気候で、紅葉も美しくなく、コケの成育も悪かった。
 以上、はなからコケ採りをあきらめ、静観しているうちに、あの「スギヒラタケ」がたいへんなことになっていた。
 以下、例のごとく関連記事をまとめてみる。


◆【北日本新聞】 記事 バックナンバー 2004年 11月 3日

 「スギヒラタケ」要注意 県内にも分布
 野生キノコ「スギヒラタケ」を食べた人たちが、原因不明の急性脳症になるケースが
相次いでいる。2日までの発症者は新潟、秋田など8県46人で、死者は14人。富山
県内でもよく食べられているキノコだが、今のところ発症者はいない。脳症との因果関
係は解明されておらず、専門家や県は注意を呼び掛けている。
 厚生労働省厚生科学課によると、発症者の大半は腎機能障害のある50代以上の中高
年者。脳症を起こすウイルスや細菌は見つかっていないが、ほとんどの人がスギヒラタ
ケを食べていた。
 発症者は東北から中部地方に集中し、専門家は「ずっと安全だったのに突然、毒性を
持つとは考えにくい」と首をかしげる。富山での発症がないことも「全く分からない」
と口をそろえる。


 このことについて、とうとう富山県でも注意報が発令された。


◆【富山県HP】 「スギヒラタケ」の摂食注意について(11月19日)

 「スギヒラタケ」の摂取注意について
 以前より、新潟県・山形県等において発生している急性の脳症の発生に伴い、腎機能の低下している方に対し摂取を控えるよう注意喚起していたところです。
しかし、今般、新潟県で発生した死亡例については、腎機能障害の有無について不明であることから、原因が究明されるまでの間、腎機能の低下していない方を含め全ての方について、スギヒラタケの摂取を控えられますよう注意喚起いたします。
 このことに関するお問い合わせは
 厚生部食品生活衛生課
 TEL:076-444-3230


 11月末頃には、いくつかの研究機関で、マウスの実験により、「スギヒラタケ」の毒性が確認されたとの報道があった。


◆【asahi.com 朝日新聞】スギヒラタケに毒性 静岡大教授らマウスで確認
  (11/29 03:03)


 急性脳症を引き起こす可能性が問題になっている野生のキノコ「スギヒラタケ」について、静岡大の河岸洋和教授(天然物化学)らのグループが、マウスに対して致死性の毒性があることを確認した。物質は特定できていないが、「水に溶け、熱に強い高分子成分」というところまで突き止めた。29日に開かれる厚生労働省の「急性脳症の多発事例研究班」で報告する。
 実験は、いずれも通常摂取量の10倍以上を与えており、人間の脳症について明確な因果関係を突き止めたわけではない。しかし、脳症の原因を細菌やウイルスなどによる感染症とする可能性は低くなったといえる。
 河岸教授らは、甲信越地方の山間部で採取したスギヒラタケを使い、同大の森田達也助教授(食品栄養化学)の協力で、(1)すりつぶして水に溶かす(2)続いて100度で30分間煮沸する(3)さらに濾過(ろか)して高分子と低分子に分ける、という方法で得た成分を、それぞれマウスに与えた。
 (1)で6匹中5匹、(2)で3匹全部が死ぬことを確認。(3)では、高分子成分を与えると3匹全部死んだのに対し、低分子成分は3匹全部生き続けた。
 スギヒラタケは、主に東北、信越地方でみそ汁や天ぷら、いため物などにして食べられている。水に溶け、熱に強い成分が原因となると、煮たり、いためたりしても、毒性が失われないことになる。
 地元のキノコ採取家によると、今年のスギヒラタケの発生は、例年より数週間程度早かったという。環境の変化でキノコの微量成分が突然増える可能性は、専門家の中でも指摘されていた。過去にも単発例だが、急性脳症の発症例が確認されている。
 「気温の上昇といった外部ストレスなどで、スギヒラタケの毒性物質の量が、今年、急に増えた可能性がある」と河岸教授。物質の特定はかなり難しいが、「来シーズンまでに何とか突き止めたい」としている。
 研究班の一人で、脳症とスギヒラタケの関連を指摘してきた新潟大の下条文武教授は「患者の追跡調査で、みそ汁の具にしたり、いためたりして食べた人が多く発症していた。水に溶け、加熱処理に強い物質が原因だろうと疑っていただけにあり得る話だ。実験データを詳しく分析したい」と話している。


 現在のところ、ヒトへの影響については、まだ究明されていない。また毒性も今年の異常気象による突然変異で、来年からはいつも通り食べられるかもしれない。
 実は、例のごとくわが家では、10月の末頃に奥様の実家から「スギヒラタケ」をいただいており、みそ汁や酒蒸しなどに使って、たいへん美味しく食べていた。もしかして、これにも有害物質が含まれていたかも知れない。さてはそれで、最近調子が悪いのかな?などと心配してみたりする(嘘)。
 しかしそれでも「スギヒラタケ」はみんな大好きなので、余程のことがない限り、来年も食べそうな気がする。この先、「スギヒラタケ」の研究成果に、熱く注目したい。




 




  「不作の年」 20031214 


 今年は冷夏だったので、秋にきっとコケが豊作だろうと噂されていた。
 しかしあにはからんや、9月は残暑が厳しく11月は晴天続きであり、山中カラカラの状態だった。やっと雨が降ってもおしめり程度で、コケが丸々と育つまでは行かない。
 それでも下記の通り、まったく採れなかったわけではなく、たまにうまく見つかったときは、いつも以上にうれしかった。

  自宅のホダ木:シイタケ
  奥様の実家:スギヒラタケ
  朝日山周辺:コガネタケ・ウスヒラタケ
  森寺城周辺:スギヒラタケ・アラゲキクラゲ
  いただきもの:クリタケ・ハイイロシメジ

 この中でとりわけ、「いただきもの」の「ハイイロシメジ」が絶品だった。
 これはほとんど天然物のホンシメジに近い種類らしく、味といい歯ごたえといい、最高のものだった。もらったのはコケ採り数十年の大先輩であり、やはりこの道、年季にはかなわない。
 自分もいつかこんなコケが採れるように、日々精進して行こうと、決意を新たにしたのだった。

※ところで、新刊の『日本の毒きのこ』(→「森の本棚」)によれば、「コガネタケ」も毒キノコに分類されていた。ただ毒成分は軽く、お腹が下る程度らしい。しかしこれは他の図鑑で食用菌になっており、判断に苦しむ。
 ちなみに昨年、勇敢にも自ら食した経験からすると、大ぶりなヤツを数本いただいたにもかかわらず、なんともなかった。奥様も同様で、サクサクとした食感がありなかなかおいしかったという。しかし、わが家の迷犬である柴太朗の晩ごはんに混ぜてやったところ、散歩の時に少々下痢気味だったらしい。
 まあ、味見程度に少々かじるくらいならいい、と言うことだろうか。

 




  「きのこ教室」 20031005 


 先月の27日(土)、氷見市の植物園で開催された、「きのこ教室―きのこを知ろう―」へ行ってきた。
 これまでコケについては、まったくの独学であり、責任は自分の体でとる覚悟のもと、各種図鑑を駆使しながら、勇猛果敢に採ったキノコを食していた。はた目でそんな夫の姿を見ていた奥様が心配して、「専門家の話を聞きなさい」と、強力に勧めてくれたのがこの教室だった。受講料が無料であったからだけではない、と思う。

 講師は、富山県中央植物園の橋屋誠氏で、まだお若いながら、ほとんど県内唯一の本格的なキノコ学者らしい。今年10月新刊の「日本の毒きのこ」(→「森の本棚」)でも、執筆に参加している。なかなか期待できる講座だった。
 当日は20数人お客が集り(この中で我々は最年少だった)、1時から3時過ぎまでたっぷりコケの話が聞けた。しょっぱなに、「コケ」とは富山県など中部地方特有の方言であり、他地方では通じないなどの、文化的な話から始まり、キノコの生態から生育の特徴など、学術的な話に及んだ。それから毒キノコ鑑定に関する迷信に触れ、スライドを使って種々のキノコを映写し、逐一その特徴を解説した。
 参加者はおおむねまじめに聞いていたが、特にマツタケ・サマツ・ショウロなどに話が及ぶと、みな目の色が変わり、即座に質問が飛びかうなど熱のこもった教室風景となる。最後に橋屋氏自ら採取した実物を陳列し、個々のキノコ鑑定法について詳しく教えてくれた。
 最初は半信半疑に参加したが、実におもしろい教室だった。

 しかしここで名誉のために言うと、この教室で話された知識の大半は、すでに独習済みであり、たいして耳新しいものではなかった。言及されたキノコも知っているものばかりで、ひと通り鑑定できた。ただ確かに、コケはいかに多く実物と接しているかが勝負であり、これからますます謙虚な気持で勉強する必要性を、切に感じる次第であった。




 




  「ウスヒラタケ」 20030728 


 きのう、ようやく北陸でも梅雨あけ宣言された。今年は梅雨が長かったせいか、草木の成長が著しく、それはコケも例外ではない。
 コウジタケ・ササクレヒトヨタケなどは、裏山で散歩の途中、何回も採れた。ちょっと山へ出かけた折には、あのアミタケを収穫できた。しかし今年の梅雨は、さらに予想を上まわり、最後になんと、ウスヒラタケまで恵んでくださった。

 奥様がいつものように裏山を散歩中、「20020923」で記したポイントへ行ったところ、件の切り株に、わんさとコケが生えていたそうな。仕事帰りにさっそく報告を受け、デジカメ担いで急行したところ、やはり誰も知らないのか、この美味しいコケがそっくり残っていた。
 前回は、洗ってから撮影したので、生きた色合いが出ていなかった。そこで今度は現場で思う存分撮りまくり、下図のように生々しい状態を記録できた。

 後は当然、食味が問題であり、どうすればうまいか考えた末、スギヒラタケで成功した酒蒸に決定する。土鍋にコケと蛤を入れ、酒をかけて煮る。フツフツと湯気が上がったら、仕上げにバターなぞ加え、アツアツのところをいただくと絶品だった。
 やっぱり、ヒラタケ系は最高に美味で、たいへん満足な夕べであった。

   
 【ウスヒラタケの図】
 ヒラタケと比べれば少々肉薄ながら、写真より現物は質感がある。これで中くらいのビニール袋一杯になり、この季節らしく水分をたっぷり含んで、しっとりしていた。




 




  「碁石ヶ峰のコケ群生地」 20030714 


 「里山日記」(20030713)にも書いた通り、碁石ヶ峰の大池周辺には、いろんなコケが生えており、この時期ほとんど群生地と化していた。ただし、大半のコケは食不適か、もしくは毒であり、おいしく食べられるコケはわずかしかない。世の中そんなに甘くないよ、という道理が思いやられる。
 しかし念入りに探しまわった成果があり、なんとあの「アミタケ」が季節をまちがえ、生えていたのだ。
 「アミタケ」とは、改めて言うまでもないイグチ科の優秀な食菌で、加熱すると赤変し、素人でも見分けられる。氷見で俗に「シバタケ」とも言い、人気の高いコケで、時々地元スーパーの店頭に並ぶこともあった。しかし、誰でも狙うコケなので、逆に我々のようなアマチュアでは、なかなかお目にかかれない。それがようやくこんな季節はずれに公園の松林で、収穫できたというわけだ。図鑑などでよく側に出でいる、近縁種の「チチアワタケ」も近くに生えていたりして、ちょっと笑えた。
 さっそく家に帰り、吸い物にして食べた。自分で採った「アミタケ」はまた格別で、独特のヌメリがある食感を、たいへん美味しく味わった。「チチアワタケ」もクセのない味で、なかなか旨い。
 この秋の本格的なシーズンにも、また採れないかなと、柳ならぬ松の下に、二本めのコケを狙っている。

   【感動のアミタケ】

 個人的に、最も好きなコケの一つである「アミタケ」を、ようやく自分で収穫できた。写真ではよくわからないが、左上のやつは特大のコケで、なんと直径12cmほどもある。
 一番右上の一本は「チチアワタケ」。




 




  「梅雨時の収穫」 20030706 


 いつぞやも書いた通り、コケはどんな季節にも生えており、とうぜん梅雨時でも例外ではない。むしろそこそこ詳しい人なら、秋と並んでこの時期に、多くのコケが生えることなど常識なのだ。
 ちなみに例のごとく、うちのわがままな迷犬に引かれて、裏山を散歩していたら、幸運にも次のようなコケに遭遇した。

 
 【コウジタケ】
 少々マイナーなコケで、食べられると知る人は少ないだろう。しかしほの甘い香りがあり、濃いダシが出てなかなか旨い。イグチの種類に独特な、柔らかい食感も、好きな人にはこたえられない。
 公園の道端に生えることがあり、散歩の時は茂みの下に目配りを怠らないこと。
 
 【ササクレヒトヨタケ】
 これは名の通り、一夜しかもたないコケで、見つけたらグズグズせず、直ちに収穫して料理しなければならない。翌朝には必ず腐り落ちて、食べる気にもならないだろう。
 実は、このコケを前にも採ったことがあり、その時はうかうかと一晩置いてしまい、悔しい思いをした。今回やっと、めでたく腹に収まったのだった。
 クセのない素直な味で、匂いはなく、歯ごたえも良い。どうしてこれがすぐ腐るのか、実に謎だ。




 




  「奥様の労作」 20030618


 うちの奥様が、某保健所にしばらく臨時で勤めていた時、コケ(キノコ)に対する並々ならぬ情熱を買われ、本務の合間にコツコツと毒キノコを研究していた(らしい)。氷見地方で食中毒に苦しまれる皆さんのことを心から心配し、文献資料ばかりでなく現地へも出かけて、骨身を惜しまず調査していたのだった。
 その成果が、立派なレポートとしてまとまったので、ここに晴れて公開したい。

 これで私も、安心してわが家におけるコケ鑑定者の座を後進へ譲り、食味の鑑賞に徹することができるというものだ。しかしそれはともあれ、実にご立派なお仕事をされたものと、わが身内ながら、感服いたしておる次第です。


  間違いやすいきのこの鑑別
   クサウラベニタケ・イッポンシメジ編

    ツキヨタケ編
    ドクササコ編




 




  「早春の大収穫」 20030309


 昨年は急に寒波が到来し、コケ取りのシーズンが短かった。さらに1月・2月と北陸らしい厳冬で、山へなど行っている場合でなかった。ようやく近頃、寒さもゆるんできたので、久しぶりにコケでも探しに行こうか、という気になった。
 「エッ、まだ冬なのに…」
などど言う奴は、コケを知らない人間に他ならない。正しい知識と観察力さえあれば、オールシーズンいつでもコケは採れるのだ。
 しかしまあ実は自分も、そんなエラそうなことは言えない。昨晩、犬と裏山を散歩していたら、たまたま下図のごとく「エノキタケ」を見つけ、これはさっそくコケ探しを敢行しなければならない、と心を入れ替えたばかりだった。

   【エノキタケ】
 「ウインターマッシュルーム」「雪の下」などとも言われる。冬を代表する美味なキノコで、もやしのような栽培モノとは、風味・香りとも格がちがう。
 森だけでなく、公園の中や民家の近くにも出るそうで、冬に散歩するときは、鵜の目鷹の目で探すべし!
 ※「コレラタケ」との類似に注意。

 しかしそんないいかげんな者でも、里山の神様は許してくださり、今日いきなりあまたのコケを恵んでくださった。
 3時頃から犬の散歩も兼ねて、「ふれあいの森」を奥まで探索することにした。こんな浅い山では、たいしてコケなど生えていまいと思い、軽い運動のつもりで舗装された山道を歩いていた。すると倒木の脇から、なんと「ヒメキクラゲ」が出ていた。ただ少々時期を逸しており、残念ながら大半は腐っていた。けれどもこれで、この付近にコケがありそうな気配が濃厚なので、もう少し奥まで行き、良さそうな薮の中へ入ってみた。
 すると、まず倒木にあの美味しい「ヒラタケ」があり、ちょっと先の樹上に「キクラゲ」「アラゲキクラゲ」が生えていた。一度にこれだけ何種類も収穫できたのは珍しく、我々のような初心者にしては、なかなかの大収穫だった。感謝感激!

 【キクラゲ三種】

 【キクラゲ】
 最もオーソドックスなキクラゲ。この三種の中では、一番うまい。
 
 【アラゲキクラゲ】
 「粗毛木耳」と書く。文字どおり食感では、「キクラゲ」に少々劣るものの、酢の物・炒め物などで、美味しくいただける。
 

 【ヒメキクラゲ】
 外見はこのようでも、酢の物などにすると、なかなかいける。
 「魔女のバター」とも呼ばれるらしい。

   
 【ヒラタケ】
 味・香りとも、極めて美味なキノコ。「シメジ」という名で、店にも出まわっている。しかし食味の点では、まったくの別物。
 ※「ウスヒラタケ」参照。
 【早春の収穫】
 量的には大したことなくても、種類が多かった。かくの如くきれいに籠盛りすると、思わず顔がほころぶ。





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                    2003年

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 「秋の大収穫」 20021107



 いきなり寒波が到来し、富山では突然初雪が降った。気象台観測以来、最も早かったらしい。今年の夏は記録的な猛暑で、冬は暖冬の予報だったのに、今からこの有様では先が思いやられる。
 ところで、今年は急に寒くなった関係で、あまり遠くの山へは行けなかった。しかし裏山の公園で柴犬の散歩中、しばしば思いがけずコケに遭遇した。おとついなども、コガネタケが道端に群生しており、驚喜して籠にひと盛り採ってきた。まるで畑のように一面ニョキニョキと生えていて、とても一家族では食べきれないほどだった。
 今年は、あのウラベニホテイシメジもさる筋からいただき、またコケのレパートリーが増えた。しかしあんまり調子に乗って、いつか食中毒になるのではないかと、ひそかに恐れている……。



  
 【あやしいコケの群生地】
 ふつうは誰も食べられるコケとは思わないらしく、まったく手付かずの状態だった。日頃の勉強の賜物であろう。
 大きいものでは20p近くあり、直に地上から生えている。とても全て採りきれる量ではなく、ほんとうに昔話にでも出てくるような、コケだった。

  
  【知る人ぞ知る コガネタケ】
 一面に黄色い粉がふいており、キナコタケともいうらしい。独特の芳香があり、つばもあって見分けやすい。歯ごたえがある美味しいコケで、テンプラ・味噌汁等、ひろく使える。ただし人によっては、かるい下痢などになることもあるらしい。くれぐれも食べすぎには要注意。

   【ウラベニホテイシメジ】

 これを採ろうとして、よく似たクサウラベニタケ等と間違い食中毒を起す。今年も氷見で一件事故があった。
ただしこのコケはちょっと苦みがあり、通好みのコケといえる。




 




  「久しぶりの二上山」 20021006


 前回で味をしめ好天に恵まれたので、意気揚揚と二上山へ出かけた。ところでさる筋の話によれば、この山でコケ取りしたことが見つかると、ひどく怒られるらしい。
 しかしまあそれは見つかった時に、運が悪かったと思うしかない。そんなことでいちいちビビッていたら、どこの山でも持ち主がおられるのだからコケなど取れなくなる。石動山みたいな自然保護区ではさすがに控えるものの、そこらの山ならいいだろう…と、あまい考えで山行の準備をする。
 昼頃に山頂付近へ着き、紅葉しはじめた木々の中で、ゆっくり弁当を広げる。ひさしぶりの森林浴で、こころの底からくつろいだ気分に満たされる。これだけでも来たかいがあったというものだ。持参したビールがうますぎ、小一時間ほどでようやく食べ終える。しまった今日はピクニックではなかったと、急いで後片付けして山へ入った。
 それから2時間ほど山道を歩き、ところどころで脇へ入ってコケを取る。しかし今回は地面が乾燥気味だったのと、時期的にまだ早かったせいで、あまり収穫がない。去年も見つけたムラサキアブラシメジモドキとチリメンチチタケ(→2001 10/13参照)が少しあっただけで、あとは残念ながら喰えないキノコばかりだった。ただはじめて、あのまっ白で美しいドクツルタケ(猛毒)が、いくつも見事に生えているのを目撃して、ちょっと感動した。
 しかし今日はひどくむし暑く、やぶ蚊が多くて閉口した。またいささか飲みすぎて足が重く、名残を惜しみつつ3時頃に早々とひき上げてきた。




 




 「秋の初収穫」 20020923 


 きのうの夕方、いつものごとく朝日山へ犬の散歩に行っていた。すると、「ふれあいスポーツセンター」近くの歩道脇に、なにやら白いものが生えた枯木があった。エッと思ってよく見たら、ヒラタケらしきコケがびっしり出ている。うっかりしている内に季節は着々と進み、こんな街の近くまで収穫の秋が訪れていた。
    さっそく一袋摘んで家へ帰り、色々調べたら、どうも「ウスヒラタケ」のようだった。類似の毒キノコである「ツキヨタケ」みたいな黒い斑点もなく、ちょっとかじると実に良い香りがする。今晩は、この秋最初のキノコ汁だ。
 ほんとうに久しぶりで「コケ日記」に書くことができ、喜ばしい。今まで一体なにをしていたのやら…。

  【ウスヒラタケ】




 




  「日々の読書」 20020118


 先週の月曜日、生まれて初めてパスポートの申請に行った(恥…)。今日の不況を顧みず、どこか外国へ豪遊する算段があったわけでは、当然ない!出不精で金欠の夫をなんとか憧れの海外旅行へと駆り立てるべく、綿密な謀を企んでいる奥様の恐ろしい布石なのだ。しぶしぶ付いて行き、ついでに本屋へ寄ったところ、思いがけない掘出物があった。
 それは、『石川のきのこ図鑑』『兼六園とキノコたち』で、絶版本が売れ残って店晒しになっていたのだ。ちょっと高かったけれど、さっそく戴きホクホク顔で帰って来た。
 いい本だった。





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                    2002年

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 「海岸の松林で」 20011110
 

 カゼもようやく治ったみたいなので、今度はいっぺん海岸も攻めてみようと、ノコノコ松田江浜へコケ採りに出かけた。晴れてはいながらずいぶん風の強い日で、カッパを着てなんとか凌いでいた。
 散歩のつもりで、あまり期待せずに防風林の中を歩いていると、小さいコケがあちこちに出ていた。名前はちょっと忘れたものの、「スギエダタケ」によく似て食べられそうだったので、さっそく摘んで袋へ入れた。他にも黄色い乳が出る、チチタケの亜種とおぼしきコケも見つかり、こちらは袋にいっぱい採ってきた。
 帰宅してさっそく図鑑を見ると、前者は「マツカサキノコモドキ」と言い、後者は「キチチタケ」だった。今晩は外食に出る予定なので、明日にでも料理することにし、塩水に浸けておいた。

 ところで今日、晴天にもかかわらず海原に虹が出ていた。半分だけで完全なものではなかったけれど、初冬の日本海の荒波に映え、なかなか美しかった。コケ採りに熱中していた奥様はまったく気付かなかったらしく、後でデジカメを見て悔しがっていた。

 
 【マツカサキノコモドキ】
 《後日談》
 たくさん採った「キチチタケ」は、やっぱり少し苦かった、無念。
 ただ「マツカサキノコモドキ」は癖のない淡白な味わいで、歯ごたえもよく美味だった。これはあちこちに生えており、また海岸歩きの楽しみが増えた。  
 
 【キチチタケ】




 




  「奥様の代筆」 20011109 

 夫がかぜをひいてダウンしてしまったので、おいしいカモ鍋で元気をつけてもらおうと、妻は山へカモうちならぬコケ取りに出かけたのでありました、ベンベン。
 しかし、しかしいつもの場所へやぶをかきわけたどりついたものの、時すでに遅し、手をふれればベロロンとなって、前は花のようだったスギヒラタケさまは、もうとける寸前といったあり様。君はやっぱり菌だったのねと妙に納得している場合ではない。おいしいお鍋のためにきのこがほしい〜。仕方なく1本1本たよりなげに生えているスギエダタケを、採集してきたのでありました。
 前の時より行動範囲をひろげ、上の方へ登ってみると、ドングリが落ちており、チチタケらしきもの2本と、カサカサになったホウキタケらしきものも見つけ、可食かどうかあやしみながら一応採取してくる。も一度降りてしつこくスギヒラタケを探すと、少し場所を変えたところにお情け程度に残っているものがあり、これ幸いと採取してくる。鍋一回分に足りるていどは取れた。つくづく先週寝とぼけていた自分がうらめしい。 さて、お味は?スギエダタケは少し苦みがあり、歯ごたえはいいもののスギヒラタケさまには及ばない。チチタケらしきものはやはり苦かった。コケ取りには時期が大切ということをつくづく思い知らされ、来年への良い教訓となった。

              ― 玉稿には一切手を入れておりません(愚夫)。




 




 「感動の大収穫」 20011027



 奥様の実家へ行き、「スギヒラタケ」を採って来た。
 ここのところ連日晴天で、人には良くてもコケには悪い気候だったので、あまり期待せずに出掛けた。ところが裏山は、そんな天候にもめげずしっとりとしており、あちこちにある杉の倒木で、花の如く白いコケがしっかり生えていた。
 感動だ!30分ほどで、なんと970gも収穫し、大アケビ2個のおまけもあった。ご挨拶も早々に、家路を急ぐ。昨今の狂牛病なんかものともせず、スキヤキ用の霜降り氷見牛が仕入れてあるのだった。

― 後日談:1kgもあったコケを、なんと2日で食べてしまった。スキヤキ・味噌汁・アサリとの酒蒸し・炊込み御飯etc…、美味かった。しかしこれから腹など痛くならないだろうか?


 【スギヒラタケ】


 当地では、「スギノモタセ」ともいう。
    




 




  「図鑑」 20011021 

 
 今日は日曜日なのに、奥様がお風邪を召され、コケ採りに行けなかった。泣く泣く最近買った『日本のきのこ』『きのこ図鑑』をひねもす見ていた。
 前者は著名な菌学者だった故・今関六也氏による、コケ鑑定本の決定版ともいうべきもので、日本で見られるコケが945種も掲載されている。写真が多くかつ鮮明で、この日記においてコケを調べる際の根拠としている。後者はお弟子だった本郷次雄氏の近著で、前者を補完する内容が盛り込まれている。何度読み返しても新しい発見があり、飽きがこない。
 ああ、面白かった。




 




 「ムラサキアブラシメジモドキとチリメンチチタケ」 20011013

 

 再び二上山へコケ採りに行った。数日前に雨が降り、コケには良いコンディションだったので、喜び勇んで山へ向った。しかし前にチェックしておいた「スギヒラタケ」のポイントは、すでに誰かが来たらしく、カケラも残っていなかった。ただ「ハナビラニカワタケ」はいつもの場所にあり、また二・三株いただいて来た。
 それから赤松や栗のある林へ向かい、あちこち散策したところ、アケビ六個とあやしいコケがいくつか見つかった。さっそく一袋ほど色々なコケを採り、帰宅してから図鑑を調べた。するとその内で二種類が、「ムラサキアブラシメジモドキ」と「チリメンチチタケ」だと判明し、ヤッタとばかりに鍋に入れよく煮込んで試食した。
 しかし、にがい。とてもパクパク食べられるような味ではなかった。
 もしかするとコケの種類を間違えたのだろうか、無念。

   【アケビとムカゴ】  【ムラサキアブラシメジモドキ】と
 【チリメンチチタケ】




 




 「スギヒラタケ」 20011012



 昨日、奥様の実家から「スギヒラタケ」が一籠届いた。
 裏山に生えていたそうで、大きなものでは直径3・4p位あった。食べるのは初体験で、酢の物でも、吸物でも、煮物でも、炊き込みご飯でもしっとりとおいしく、実に幸せな気分だった。
 これで私も完全に、コケ採りマニアとなってしまうだろう。後々のことが少々思いやられるのだが…。




 




 「ハナビラニカワタケ」 20011009


 かねて計画していた通り、近くの里山へコケ採りにいった。
 氷見市と高岡市の境にある二上山の頂から少し下った場所で小道を見つけ、山に入ったところ、予想外にいろんなコケが出ていた。ただ今日は晴天なので、どのコケも干乾びており、結局「キクラゲ」に似た「ハナビラニカワタケ」を二・三株見つけただけだった。
 しかし、アケビ・シバグリなどもいくつか見つけ、ほとんどド素人の割にはめでたくこの秋初日から収穫があった。ビギナーズ・ラッキーだろうか。ともあれこれは、酢の物にするとなんともうまいコケだった。またぜひ食べてみたい。

  【ハナビラニカワタケ】
  初収穫の美しいコケだった。
【二上山頂より】